睡眠は人間にとってとても重要な欲求の一つ。良質な睡眠により疲れを回復し、健康を維持することができます。
しかし多忙な現代人は、不規則な生活やストレスの多い環境にさらされ、なかなか理想の眠りに付けないことも多いでしょう。
不眠症の症状を改善するには、生活環境や習慣を整える以外にも「睡眠薬に頼る」という方法もあります。今回は、睡眠薬の効果や、種類・副作用について解説していきます。
睡眠薬の効果とは
睡眠薬(睡眠導入剤)は読んで字の如く、主に「不眠症の治療」に用いられる薬。睡眠薬を服用すると脳内の神経伝達物質が抑制され、リラックスや眠気を促す作用があります。
また服薬することで睡眠自体も深くなり、熟睡できると言われていますよ。
睡眠薬には脳内の神経伝達物質を調整する働きがあるため、不眠症以外にも一部の心疾患やうつ病・不安障害など、不眠症を合併することが多い疾患に処方されることもあります。
ただし睡眠薬は依存性などの副作用や、長期間服用すると効果が弱まるなど、安易に使用すると危険な場合も。睡眠薬の服用は、医師の指導のもとで適切に使用することが重要です。
知っておきたい!睡眠薬の副作用
不眠症改善に効果的な睡眠薬ですが、服用後に様々な副作用が出現することがあります。服用後に現れやすい主な副作用は以下の5点です。
- 強い眠気
- だるさ
- めまい
- 頭痛
- 吐き気
また睡眠薬には中毒性があるため、長期的に服用すると、依存症や禁断症状が現れる場合もあります。使用を中止すると酷い不眠や悪夢・不安感、けいれんなどの症状が出ることも。
誤用や乱用など急激に服用量を増やすと、呼吸困難や昏睡状態を引き起こしてしまうこともありますよ。睡眠薬の安易な使用は厳禁。医師の指導に従い適切な使用方法を厳守しましょう。
代表的な睡眠薬の種類
代表的な睡眠薬は
- ベンゾジアゼピン系
- 非ベンゾジアゼピン系
- 抗ヒスタミン薬
などがあります。
ベンゾジアゼピン系
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は即効性が高く、睡眠を促す作用のほか、不安感の軽減などの効果も期待できます。
主なベンゾジアゼピン系睡眠薬は以下のとおりです。
ハルシオ
- トリアゾラム製剤
- 超短時間作用型に分類される
- アルコール類の摂取に関して薬の作用が特に増強する場合があるので控える
レンドルミン
- ブロチゾラム製剤
- 短時間作用型に分類される
- D錠(口腔内崩壊錠)があり、嚥下能力の低下した患者などへのメリットが考えられる
ベンザリン,ネルボン
- ニトラゼパム製剤
- 中間作用型に分類される
- ベンザリンは細粒剤、ネルボンは散剤があり、嚥下能力の低下した患者などへのメリットが考えられる
- てんかんの治療や麻酔前投与の薬剤として使用する場合もある
サイレース
- フルニトラゼパム製剤
- 中間作用型に分類される
- 海外では持ち込みが禁止されている国もある(例:米国)
ドラール
- クアゼパム製剤
- 長時間作用型に分類される
- 食後すぐに服用すると薬の効果が過度に増強される場合がある
エバミール,ロラメット
- ロルメタゼパム製剤
- 短時間型に分類される
- 腎機能や肝機能に障害ある場合においても比較的安全性が高いとされる
ただしベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、ふらつきや健忘・翌朝への持ち越しなどの副作用が生じることもあります。
非ベンゾジアゼピン系
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は薬の半減期が短く、翌朝の眠気・ふらつきなどの副作用が少ないため、高齢者にも利用しやすいと言われています。
主な非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は以下のとおりです。
アモバン
- ゾピクロン製剤
- 効果持続時間が最も短い超短時間作用型に分類される
- 薬の苦味が唾液に残る場合がある
- 麻酔前の使用(麻酔前投薬)にも保険承認されている
マイスリー
- ゾルピデム製剤
- 効果持続時間が最も短い超短時間作用型に分類される
ルネスタ
- エスゾピクロン製剤
- 効果持続時間が最も短い超短時間作用型に分類されるが、その中では比較的効果の持続がある
- 夜中に何度も目が覚めてしまう中途覚醒にも比較的効果があるとされる
- 薬の苦味が唾液に残る場合がある(ゾピクロン〔主な商品名:アモバン〕よりは苦味が少なめとされる)
ただし非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は効果が中等度なため、頑固な不眠を感じている方には効果が見られないこともあるでしょう。
抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬は、脳において覚醒作用・興奮作用に関わるヒスタミンの働きを妨げ、脳のヒスタミン受容体に結合することで、覚醒・興奮を弱めて眠りを促す作用があります。
ヒスタミンはアレルギー反応に関わっているため、「抗ヒスタミン薬」という名前を、花粉症の薬で聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
睡眠薬として使用される主な抗ヒスタミン薬には「ジフェンヒドラミン(商品名:ドリエル®)」などがありますが、抗ヒスタミン薬は効果が弱く、長期的な不眠症には向きません。
眠気の副作用を逆手に取った危険性の少ない睡眠薬として薬局で販売されていますが、本来の用途とは違うため、医師が睡眠薬として処方することはほとんどありません。
まとめ
睡眠薬は不眠症の治療に欠かせない薬ですが、依存性など重篤な副作用もあるため、自己判断での使用は禁物です。
不規則な生活やストレスの多い環境など、まずは不眠症を引き起こしやすい習慣を改善することが大切でしょう。しかし環境を整えるだけでは不眠症の改善が見られない場合は、睡眠薬の服用を検討するのもひとつ。
その場合は専門医に相談し、適切な指導のもと正しい使用方法を守って服用するようにしましょう。